2015年2月8日日曜日

人類婚姻史 ~日本の婚姻史~

 「知的な生命である人類は古代から一夫一婦婚だった」と信じる人が多いようだが、婚姻に関する認識は、ここまでで見てきたように時代とともに大きく変化してきた。
 ここでは、婚姻の形態の変遷を時系列でまとめてみる。特に、独特な婚姻形態をつい最近まで持っていた地域である日本を中心に示す。  





 原始の日本民族は長い間、採集部族として集団婚(それも、最も原始的な近親との婚姻)を続けていたとみられる。
 1700年前に大陸からやってきた侵略部族に支配され、統一国家が形成された後も、長い間集団婚の流れを汲む夜這い婚(妻問婚)を続けた。 

 大宝律令(701年)には、一夫一妻制があり重婚の罪があった。(参考

 しかし、貴族、将軍、天皇においても、「正室」を置くことで一夫一婦制の理想に沿いつつも、実質は一夫一婦多妾制をとっていた。

  一般のムラ社会の中では、夜這い婚が継続されていたとみられる。「夜這い婚」=「集団婚」であり、1対1の男女が独占的に婚姻関係を結ぶのではなく、特定 の共同体内の複数の男女が婚姻関係を結ぶものである。これはただの無秩序な乱婚ではなく、村落共同体を維持していくためにシステム化された婚姻制度であ り、性的規範である。そのシステムの詳細仕様は、地域によって多様である。(参考
 明治時代、欧州化の流れで政府から夜這い禁止令が出されたが、農村部では昭和初期まで行われていた。縄文の流れを汲む夜這いの特殊性は、外国人を驚かせたようである。
 ここまでで述べたとおり、日本において、一夫一婦制が明確に意識され始めたのは、せいぜい100~200年前なのである。日本人が採集を始めた1万年前からのスケールで見れば、日本人の一夫一婦婚の歴史は、たった1~2%なのだ。


 人類の婚姻史を改めて辿ってみると、恋愛や結婚、子作りへの認識に多少なりとも変化が生じるだろう。

 ■ 婚姻形態は、時代に応じて大きく変化してきた
 ■ 種族保存の戦略の下では、個々人は平等ではない
 ■ 人類は、非常に長い期間、広い地域で
   一夫一婦婚ではない婚姻形態で種族を守ってきた
 
 この事実は大きい。
 一夫一婦婚の思想が支配的である現代社会を過去の婚姻形態に戻すことは不可能だろう。
  ただ、現代社会の中で一夫一婦婚について、人々の性的充足という視点でも、種族保存という視点でも、何かミスマッチが起きているということに多くの人が気付き始めている。そろそろ何らかの変化が起きてもおかしくないし、もう変化させるべきだと思う。(フランスでは既に「パックス制度」という形で変化の兆候が現れている)
 特に、日本人にとって一夫一婦婚は、借り物の概念でしかない。それは美しいものであるし、パズルのピースが上手くはまるような気持ちの良い概念でもあるが、日本人の無意識に十全に浸透しうるものなのだろうかと思う。

 少子高齢化やあらゆる性的な問題について思考・議論するとき、旧来的な婚姻の概念に囚われていては根本的な問題解決策は見えてこないだろう。古来からの婚姻形態の流れを知り、種族保存の戦略は多様であることを知らなければ、思考の牢獄から脱することは出来ない。

(参考)
 :人類史全体のおおまかな流れについては、こちらを参考にしました。


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