悪魔事典 (Truth In Fantasy事典シリーズ)
世界のあらゆる時代の神話、小説に登場する悪魔について網羅している本だ。

「Le calvaire, 1882」(Félicien Rops)
ロップスの悪魔的な絵は禍々しい肉体性と相俟って迫力がある。
また、悪魔主義の社会的意味と歴史についても少々記述されていた。
自ら調べたことと併せて下記に書いてみる。
1.悪魔主義の社会的意味
現代的な思考で「神」読み解いていくと、「神=体制」である。体制はその権力を維持するために、神を味方につけた。時の権力者が、野山を開拓し、国を創造し、あらゆる諸問題を解決し、「反体制の者共」を討伐した様子が善行として描かれたものが、神話なのである。
この論理の中で、「神=体制」の敵である「反体制」が正に「悪魔」として描かれる。
神話に描かれてきた「悪魔」は、悪政を働く体制と戦った英雄だったかもしれないのである。
(この本では「悪魔」について「相対的な悪」という説明の仕方に偏っており、「絶対的な悪」の概念への言及が欠けているように思われる)
2.悪魔主義の歴史
悪魔主義が誕生したのは、19世紀末のフランスとされている。その頃のフランスは、フランス革命から1世紀が経過し、世の中はデカダンスの様相を呈していた。
革命当時、旧来の宗教への懐疑と体制への懐疑が混在しながら高揚していた。権力を体制から民衆へと引き戻そうとする流れの中で、特権階級であったカトリック教会の聖職者たちも革命派の標的となった。
こうしたキリスト教弾圧の背景をもつ悪魔主義の基礎には、民衆を統治する装置としての既成道徳の呪縛を祓い、抑圧された個人主義的、快楽主義的思想を解放するという概念がある。社会的革命と呼応するように起こった精神的革命であると言えよう。