橋本徹さんの戦時下の性に関わる発言を廻った
「一連の現象」が私にとって興味深いものになっています。
「性が絡んだ話題に対しては、
どれほどIQが高くても、どんなにお勉強ができても、どんな知識人でも、
合理的に議論することが困難になってしまう」
私が以前より考えていた、このことが正に表現された現象ではないかと思うのです。
橋本さんの主張の前提条件は
・大戦当時、軍人たちが慰安婦や現地私娼を活用していたのは、日本だけではない。
・上記をのようなものを活用して性的エネルギーを発散することは、
現代の価値観では許されない。その時代に戻ってはならない。
・ましてや、強制連行の慰安婦(性奴隷)など絶対に許されい。
日本については、2007年の閣議で強制連行の証拠はないとされている。
ただし、意に反した慰安婦がいたとしたら謝罪しなければならない。
・軍人の性的亢進という現象は、心理学的にも、歴史的事実からも
間違いなく起こるもので、その高まった性的エネルギーは、
性犯罪を防止するためにコントロールされるべきである。
・沖縄駐留米軍に(やや皮肉を込めて)奨めた「風俗業」は、合法的なものである。
(決して、買春ではない)
といったところでしょう。
その上で、
・日本だけがレイプ国家だと世界から非難されるのは理不尽であり、
その不当な批判により国益を失うのは避けるべきである。
・(米軍について)沖縄県民に対してレイプするくらいなら、
合法的な「風俗業」を利用し、法の秩序の中で性的エネルギーを
コントロールしてほしい。
と主張しているのです。
全くもって全面的に筋が通っていると思います。
唯一、ロジックに穴があるとしたら、
軍人の性的エネルギーのコントロールの方法について、
従来から存在し、誰もが簡単に思いつくであろう、
「風俗業を利用する」という解決法を提案することに
留まってしまっていることくらいかと思います。
現状は風俗業活用くらいしか方法がないが、
より有効な方法を研究することが人類の課題である、
とでも付しておいた方が角が立ちにくかったでしょう。
また、橋本さんは繰り返し
「なぜ日本だけがレイプ国家だと誤解されているのか考えなければならない」
と述べています。
残念ながら現状は、韓国のロビー活動や
国内のリベラリストと称する歪んだ思考の持ち主たちの活動が
見事に成功しており、彼らが世界中に流布した間違った認識を
修正していく必要があるということを暗に示しているものと思われます。
注目すべきは、橋本さんの主張に対する批判が悉く筋違いであることです。
批判する人たちの言葉に敢えて一々反論していくと、
逆に橋本さんの主張が合理的であることを裏付けることができます。
その典型的なパターンについて見ていきましょう。
①女性の人権を侵害している。
していません。
あくまで、合法的なものを活用するべきと述べています。
風俗業に従事する者は自分の意思で、日々多くの人の嫌がる仕事をして、
一定の社会的役割を果たし、一般の平均よりも高い報酬を得ています。
ニュースで目にしましたが、横断幕を掲げて活動をする「女性団体」は、
さながらピクニックに来ているようなもので、仲間で集まれそうなネタに釣られて、
碌に相手の主張を理解せず、騒いでいるに過ぎません。
彼らの目的は、集団の結束固め、
社会へのコミットを深めること、
身体的には失われつつある女性であることの実感の回復です。
風俗業が人権侵害だというのならば、批判の矛先は法律に向かうべきです。
「女性団体」を名乗るのであれば、
もっとロジカルに責任を持って、女性の役に立つ活動をしてほしいものです。
②沖縄県民を侮辱している。
していません。
沖縄は大きな負担を背負いながらも、
日米安保において大きな役割を果たしてくれていることを認めています。
また「風俗業活用」は米軍の性犯罪から沖縄県民を守るための一案であり、
アメリカへの皮肉の表現です。
③時代を逆行しようとしている。
していません。
当時の実態は恥ずべき状態であり、
当時のような管理の行き届いていない仕組みは
現代では許されないと述べています。
その恥ずべきことを日本だけでなく、世界中が行っていました。
④性的欲求は個人の責任で抑制するべき。
できる人はできる。できない人はできない。
軍人1万人がいて、9999人が良識を守れたとしても、
1人が性犯罪を犯せば大問題になります。
生命に関わる緊張状態は種の保存の原理により、
性欲増大につながります。
それだけでなく、戦時下も含め、占領地に駐留する軍人は、
占領地の現地人を侮蔑したり敵対視しやすく、
また自国の法律の影響力から解放されているような錯覚を受けやすく、
さらに秩序を無視して殺人、強盗、レイプなどを実行しうる
武力を保持している環境にあるという、これらの条件により、
犯罪を犯すリスクが一般人よりも高まります。
組織を束ねる責任者には、そのリスクを減少させる方策を立案する責務があります。
気合いで性欲を抑えろと指導するマネジメントや
厳しく指導しますと言うマネジメントは前近代的で、最低のマネジメントです。
リスクに対してメカニズムを分析し、そのメカニズムに対して対策を講じることで、
0.01%で起こるものを0.001%にしようとするのが現代のリスクマネジメントの常識です。
これが理解できない軍司令官、政治家、経営者、医療関係者は失格です。
なぜ性について語ろうとすると、このような思考の誤謬が起きやすいのか。
(私の興味はこれまでの話よりも、ここにあります)
多くの人々に一様に非合理な言動が見受けられた場合、
その裏には心理学的な原理が隠されていることがしばしばあります。
私なりには次のようなことではないかと思います。
一つは道徳教育にあるでしょう。
性対象は特定の異性に限定しなければならない、
性行為は正常な方法で行わなければならない、
性を商売にしてはならない、
といった教育は、社会の性的秩序を守る為に必要です。(特に子供に対して)
しかし、合法的であるならば、良識ある者が自らの秩序の中で、
こうした教えを逸脱しても問題はありません。
その一方で、教条的に道徳を振りかざす者は、
その行動によって簡単に正義の側に立つことができ、
それによって優越感を得ています。
また、道徳に従うことが多数派であり、
その道徳を活用することで正義の代弁者を演じることが出来る為、
政治家にとって利用しやすいのです。
橋本さんは「僕は建前よりも実をとる政治家だ」というが、
多くの政治家は「実よりも建前(票)を取る」。
票を取るのが目的ならば、統計学に従うべきで
後者が正しいことになります。
政治家がどの程度意識的に上述のような行動選択をしているかは不明ですが。
他方、性に関する若干常識を超えた意見に対する
人々の過剰なまでの拒絶や批判といった反応からすると、
次のようなことも考えられます。
人間は、生殖のプロセスに異常があると他者から認識された場合、
生物として欠落していると看做される恐れがあり、
それは種の保存の上で大きなマイナスになる為、
無意識的な防衛体制に入るのではないかと考えます。
典型的な例としては、
ヘテロの男性がゲイと誤認されそうになると、
慌てて訂正しようとします。
ゲイと誤認されれば、女性が遠ざかり、
生殖の機会を失い、種の保存が困難になる為です。
非合理な批判によって、今回の議論から逃避しようとする
政治家やインテリぶった評論家やタレントを目にすると、
無意識的な生命の足掻きのようなものが垣間見えた瞬間だなと、
興味深く見入ってしまうのです。
以上は誰かの意見に賛同したり、批判したりして
議論に加わりたい訳ではありません。
橋本さんと橋本さんを批判する人たちの主張を比較した際に、
合理性の有無という点で、両者間に明らかなコントラストが
発生しているということを切り口に、
いろいろと考えを廻らせたというものです。