2012年4月14日土曜日

『性倒錯─様々な性のかたち』ジェラール・ボネ(PART2)

前回に続き、ボネ著の『性倒錯─様々な性のかたち』の中身を紹介します。
気になった箇所を端的に箇条書きでいきます。
前後の文脈の中でないと意味が分からない文章もあるかと思いますが、
雰囲気だけでも掴んでいただければ。

性倒錯は孤独な快楽
・倒錯者は、自分の作品要素の中に自らの性的特性を組み入れている。
・倒錯は無意識のコードに対応しており、自体愛的な快楽を目指しているので、
 極めて個人的である。それを体験する者にとっても孤独で神秘である。
・倒錯行為は、もともと必然的に排他的になろうとする傾向をもっている。
 倒錯行為が他の形の快感を消していくことで、満足を増していくことも稀ではない。
・倒錯行為は、反復やステレオタイプな形に至ることがあり、
 しばしば表向きの意味作用が失われ、凝り固まってしまうこともある。
 そうすると、主体はますます非合理な方法を強いられてしまう。

性倒錯者は個々に無意識の内奥で、極めて独特な文脈の中に
性的快楽を組み込んでいる。
作り上げたストーリーを演じることが目的化し、
通常の性的快楽すらバイアスとなり、邪魔になることもあるとのこと。


倒錯は遺伝するのか?
・遺伝性は、他の病気より少ない。
・子供に倒錯が見られることは稀である。子供の倒錯では、
 原初的な欲動の活動が問題となっており、大人の倒錯に類似しているが、
 その意味合いは異なっている。(ボネ)

因みに、私は幼児期(3歳前後)に自らの倒錯的傾向を自覚し始めていました。

対象倒錯と目標倒錯
・対象倒錯:性的魅力が「対象」によって優位に発揮されるような人、
      あるいはそのような現実を、性対象倒錯と呼ぶ。
      近親相姦、獣姦、死体愛等、性行為そのものは正常だが、
      対象に倒錯が見受けられる者。
・目標倒錯:窃視症、サディズム等、性衝動を通常の性行為以外の
      行為によって満たすもの。

●対象倒錯の例
・ある種のナルシシズム(1898年;ハヴロック・エリス、ネッケ、ザドガー):
 主体は鏡に向かって自慰することでしか快楽を得ることが出来ない。
 したがって、この場合の対象は自分自身であり、様々な形で実践可能である
 (写真、録音等)。
・死体愛:精神薄弱や精神病が原因の場合もある。もっと控え目な形では、
     葬式で興奮したり、危篤状態のパートナーに病的な快感を
     覚えたりすることがある。こうした快楽が成立するのは、
     あらゆる離別の彼方に、無意識的な母への固着が
     存在するからである(ポー、ボードレール、モラヴィアなどの文学を参照)。
     ヴァンピリズム(吸血症)についても同様。
・獣姦:父親と理想化された動物の間には古典的な代理関係が存在することが
    知られている。

フロイトの転機
フロイトは倒錯者と正常者の間の高い壁をあえて乗り越えようとした。
それは、倒錯者が世界的に共有された産物であり、
必ずしも病的なものではないことを示す為である。
倒錯は性的無意識に依拠している。
つまり、倒錯はもはやアウトサイダーのための表現ではなく、
最も基本的な様相の一つと考えられるようになった。

フロイトから読み取れる3つのセクシュアリティ
①自発的、暗黙的なもので、言語の中に埋め込まれている。
 したがって、これが依拠するところは文化的なものである。
 これは基本的に、理想的セクシュアリティとの関連で練り上げられる。
②倒錯を性器的セクシュアリティと関連付ける考え方。
③倒錯を前性器的な欲動的セクシュアリティに関連付ける考え方。
 つまり、人間のメンタリティを奥底で組織化している
 幼児性欲と倒錯とを関連付けようという考え方。

倒錯のネーミングの由来
●有名な地名に由来する表現
・ソドム:ソドミーは禁じられた不浄の身体の場という意味から、
     肛門性交を意味するようになった。
・レスボス:アテネのギリシア人作家が、同性愛者一般の故障として
      レズビアンという言葉を用いたのが始まり。
      詩人サッポー(紀元前7~6世紀)は宗教的女性結社の指導者で、
      少女の教育を担っていた。彼女の作品の多くは女性の魅力を
      褒めたたえるもので、嘲笑の的であった。
      サッポーがレスボス島の出身であったことから、
      アテネでは「レズビアン」と呼ばれ、やがて同様の自由を要求する
      女性すべてにこのことばが用いられるようになった。
     「サフィズム的な快楽」と呼ばれることもある。
      因みに、レスボスは男の神の名前。

●アンチ・ヒーローの名前に由来する表現
オナン:ユダヤ・キリスト教において、ソドムと同じくらい不名誉な名前。
    聖書の創世記に登場する人物。死んだ兄の代わりに
    子孫を残すべく兄嫁と結婚させられたが、当時の法に則り
    子供が出来れば、父の遺産が自分のものとならないのを知っていたので、
    「子種を地面に流した」とされる。社会集団がセクシュアリティに
    割り当てた目的に逆らったという理由で、彼は倒錯とみなされた。
    オナニズムはマスターベーションの類似語となり、
    多くの倒錯において重要な位置を占める。
    勿論、この行為自体は倒錯に当たらない。

●半神の名前に由来する表現
時間や空間の隔たりを飛び越えて、快楽至上主義の古代ギリシア・ローマの
異教文明の半神を持ち出すことによって、倒錯を多少なりとも
不気味な中間存在として位置付けることが出来る。

・ニンフ:ニンフォマニアも同様である。この古い言葉(1732年)は
     ギリシア語を起源としている。
     マニア(躁病)が想起されるが、魅了という意味に重点が置かれている。
     女性の性欲が亢進している状態を表す。(クラフト=エビング)
・サテュロス:ギリシア神話に出てくる半人半獣の神。常時勃起した陰茎を持つ。
       サテュリアシス(男子色情症)は古代医学の用語に属する。
       しばしば、色情症に留まらず男性の倒錯一般を表すのに使われる。
       倒錯に神的な由来を与えることは、われわれが無意識の側にあるものに、
       より接近しやすいという利点がある。




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